Hadrien Feraudのソロアイデア解説

最初に
どもベーシストのハリマです。
今回はHadrien Feraudのアドリブソロをいくつかトランスクライブしてきて得たアイデアを紹介してみたいと思います。
動画も作ったので併せてチェックしてみて下さい。
Hadrien Feraudは神なので僕ごときが語るなど厚顔無恥で烏滸がましいのですが、厚かましくも僕が今の段階で認知できるアイデアやアプローチを解説してみます。
今後、自身のスキルアップにつれて考え方が変わっているかもしれませんので、参考程度によろしくお願いいたします。
要はお豆腐メンタルなので叩かないでね!ってコトです。
今まで
・Strasbourg St.Denis
・Friday Night At the Cadillac Club
・Chane's Song
・Gentle Thoughts
の4曲をトランスクライブして動画投稿しました。
今思えば最初の方は特にちゃんと弾けてなく酷いもんですが、興味があれば見てみて下さい。
よく言えば少しづつ成長しているのは感じられるかもしれません。笑
Hadrien Feraudのアプローチ
僕のHadrien Feraudの特に大好きなポイント(もはや全部好きだけど)はホリゾンタル、バーティカルなアプローチそれぞれが自然に融合して、アドリブソロだとしても美しいメロディになっているところだと思っています。
マイナーペンタトニックスケールやヘキサトニックスケールを中心とした歌うような表現に、メロディックマイナースケールの派生スケールを織り交ぜたフレーズが、これ以上の正解は無いような美しさで指から弾き出されてます。
・ホリゾンタル 可能な限りひとつのスケールで考える横方向を意識したアピローチ
・バーティカル 各コード単位でスケールを考える縦方向を意識したアプローチ
フレーズが速いのとベースという楽器でやってるせいなのか、難解で複雑なアプローチにも聴こえますが、実は音使い自体は基本の延長線上な事も多く、ジャズをある程度学んでいれば理解できる部分が多いと思います。
ですがこれらの基本的なアプローチを、超絶なテクニックと表現力、語彙力、リズムコントロールで別次元に押し上げてるのです。
Hadrien Feraudのプレイを見て「これは真似する物じゃなくて見るもの...」ってなるのは結構あるあるやと思うんですが、確かに超絶な速弾きを可能にするフィジカルはどうしても膨大な時間の積み重ねが必要ですが、シンプルなマイナーペンタトニックスケールやヘキサトニックスケールを使った歌うような表現は、そこまでのフィジカルは必要としないので比較的取り入れやすいのではとも思っています。
もちろん、それにしても繊細な楽器のコントロールは必要なので簡単というでは無いですが、こんなものは弾けば弾くだけ自分のフレーズとして落とし込めるので、楽器の練度はあまり気にせずに好きと思うのなら早い段階から挑戦してみるのがいいのではと思います。
以前、上原ひろみのHiromi's Sonicwonderのライブを見た時に、アドリアンがペンタ中心のフレージングでソロを弾いていたのですが、あまりに表現が素晴らしすぎて涙が出るほどでした(ただただ愛が溢れてしまった可能性)。
解説に使うアドリブソロ
今回はGentle ThoughtsというHerbie Hancockの曲のカバーで、Hadrien Feraudが弾いてるベースソロを中心に踏み込もうと思います。
理由としては
・コード進行がシンプルで汎用性が高い。
EMaj7 - C♯m7 - F♯m7 - B7 (ⅠMaj7 - Ⅵm7 - Ⅱm7 - Ⅴ7)
・超絶速弾きが出てこない。
・ただただカッコいいから。
といったところです。
アプローチ解説
まず全体として
■ホリゾンタルなフレーズのアイデア
①Hexatonic Scale
■バーティカルなフレーズのアイデア
②Altered Scale
③セカンダリードミナントを使ったAltered Scaleフレーズ
④m7(Ⅱm7,Ⅵm7)の代理コード使ったMaj7系フレーズ
⑤B7(Ⅴ7)上でAMaj7(ⅣMaj7)を使ったフレーズ
⑥Ionian Scale、Lydian ScaleをLydian♯5 Scaleに変化させたフレーズ
これらの6つを中心に見ていきます。多いな...。
ではそれぞれ解説していきます。
Hexatonic Scale
Hexatonic Scaleとは
あんまり聞き馴染みのないスケールかもですが、要は6音で構成されたスケールの総称です。
以前投稿したMinor Pentatonic Scaleの解説動画の延長線でも触れてますので、こちらも是非チェックしてみて下さい。
よく使われるスケールとしては、今回はMinor Pentatnic Scaleを基準として
・Minor Pentatnic Scaleに♭5 (Blues Scale)
があります。
他にもMinor Pentatonic Scaleにそれぞれ9th、m6を足した
・Minor Pentatonic Scale+9th
・Minor Pentatonic Scale+m6
もHexatonic Scaleと言えます。
なんとなくよく使いそうなポジションを図にしてみました。
Gentle ThoughtsはKey=E/C♯マイナーなのでC♯Minor Pentatnic Scaleを記しています。

Minor Pentatonic Scaleに9thやm6を足したらそれはもうNatural Minor Scale(Aeorian Scale)では、という疑問が出てきますが、あくまでMinor Pentatonic Scaleのシンプルかつ直感的な操作法にプラス1音で色を加えれる、というのがこれらのHexatonic Scaleの魅力。
なので僕はこれらの各Hexatonic Scaleをそれぞれスイッチしながらよく使います。
意外と語られることが少ないように感じますが、Hadrien FeraudはこれらのHexatonic Scaleを本当に美しく歌うイメージが僕はあります。
実際にHadrien Feraudがこのように考えてるかは、それはもう本人に聞かなければ分かりませんが、烏滸がましくも僕が思う限りは、こんな風に考えてるじゃないかなと。多分ね...。
Hadrien Feraudが実際に使ってる箇所
今回のGentle Thoughtsもそうですが、Strasbourg St.Denisでのソロの導入部分もHexatonic Scaleが使われていて、本当に美しいメロディを奏でられています。神。
Strasbourg St.Denis

F Minor Pentatonic Scale+(m6 or ♭5)それぞれをスイッチして使ったようなフレーズ。美しすぎる。
Gentle Thoughts


C♯Minor Pentatonic Scale+(9th or ♭5)のHexatonic Scale中心のフレージングが長尺で出てきます。
このように、うまく使えば耳馴染みがよく美しい歌うようなフレージングが可能になります。
Altered Scale
次にAltered Scaleを使ったフレージングについて。
Hadrien FeraudといえばAltered Scale、といったイメージを持ってる人も多いかもですね。
指板上でのAltered Scale
なんとなくよく出てくるポジションを図にしてます。

使えるタイミング
使えるタイミングとしては完全4度上(完全5度下)の何かしらのコードにドミナントモーションするセブンスコード上で使用できます。
今回解説するGentle Thoughtsで言えば
EMaj7 - C♯m7 - F♯m7 - B7 (ⅠMaj7 - Ⅵm7 - Ⅱm7 - Ⅴ7)
のB7がEMaj7に向かってドミナントモーションしているので、B7上でB Altered Scaleが使用できます。
他にも一工夫する事で使える箇所がありますがそれは後ほど。
半音上のMelodic Minor Scale
ちょいちょい「Altered Scaleを使う時は半音上のMelodic Minor Scaleを適当に弾いたらいいんですよね?」と聞かれます。
Altered Scaleは視覚的に覚えにくいので半音上のMelodic Minor Scaleも併せて、スケールのイメージを補強する意味でも見えていた方が良いのは確かです。
もっと言うと弾くフレーズによって、意識するスケールを変えてフレージングします。(僕はAltered Scaleも含めこれらの5つを使うことが多い。)
例えばB Altered Scaleの派生スケールで
・半音上、♭9を主音としたC Melodic Minor Scale
・M3を主音としたE♭ Lydian♯5 Scale
・♯11を主音としたF Lydian♯11 Scale
・♭13を主音としたG Mixolydian♭13 Scale


つまりフレーズによって様々だし、適当はダメ。ってことです。
半音上のMelodic Minor Scaleを適当に並べても十中八九サウンドしません。
ペンタと違って(ペンタだって適当ではサウンドしないけど!)特にサウンドさせるのが難しいイメージです。
じゃあどうするか、、、
私たちの神ことHadrien Feraudのフレーズをリックとしてパクりましょう!!!
神の操るフレーズを元に慣れてくれば、どういった動きをすればサウンドするか掴めてくるので、アドリブでもアレンジできるようになってくるでしょう。
ここでは小難しい派生スケールは特に出てこないので、ひとまずAltered Scaleだけ考えてみましょう。
(後半にLydian♯5 Scaleだけ出ますが...)
これらの詳しいAltered Scaleの解説も記事と動画があります。
Altered Scale 解説
Hadrien Feraudが実際に使ってる箇所
まずGentle Thoughtsのソロから5つのAltered Scaleを使ったフレーズをピックアップしてみました。
ここでは僕の演奏を流しますが、概要欄や僕のウェブサイトに時間指定した動画のリンクを貼り付けておくので、そちらを確認して下さい。
(どう考えても神本人の演奏を聞くべきです。)
■9:05~

■9:50~

■10:18~

■9:45~(ここからはコードがB Altered ScaleではなくC♯Altered Scaleですが、後ほど解説しますので、ひとまず音使いだけ見てもらえたら。)

■10:59~

お気づきかもしれませんが、これらのフレーズは最初の4つの音は全て同じフレーズとなっていて、ひとつのソロで5回も同じフレーズが出てきます。
Hadrien Feraudも繰り返し使用するような、こういった手癖的なフレーズこそが美味しい音使い、つまりサウンドさせるヒントになるのではないでしょうか!
実際こういう音使いは、組み合わせを変えて色んな場所で出てきます。(Hadrien Feraud以外のジャズミュージシャンでも!)
ソロで同じフレーズばっか弾いてしまう悩みって結構あると思うんですが、Federico MalamanだってRchard Bonaだって同じフレーズめっちゃ弾いてます。
まぁ神と比べても仕方ない(こういう人達そもそも何弾いててもカッコいい...。)ですが、意外と同じ事弾いていいんだなって思えますよね。
それなら自信気に弾いてる方が説得力も出るってもんです。
Altered Scaleの覚え方
今出てきたフレーズですがどれも♭13から始まるフレーズになっています。
こういったフレーズを覚える時は特に、またそれ以外でもですが、B Altered Scaleに加えてBaugコードも見えてると覚えやすいと僕は思っていて、レッスンでもAltered Scaleを取り扱う際はaugも同時に教えてます。
augコードは長3度ずつ積み重ねたコードなので視覚的にもシンメトリーで比較的覚えやすいのと、階段状になっているので♭13も捉えやすく、♯9,♭9もR,M3の隣だと思えば覚えやすい。
要は覚えにくいAltered Scaleの中に骨組みができるイメージ。

汎用性の高いフレーズに少しアレンジしてみる。
リックとして使いやすいように少しアレンジしてみました。
■メジャーに解決する場合

■マイナーに解決する場合
最後の音を半音下げてEm7のm3の音に着地するようにしてあげる。

先ほどのBaugも意識すると覚えやすいです。

このように覚えたフレーズを、自分なりに少しずつ変化させてみてカッコよくなるポイントを探して落とし込むのもめっちゃいい練習になります。
セカンダリードミナントにリハーモナイズしてAltered Scaleを使う
Gentle Thoughtsのソロの進行は
EMaj7 - C♯m7 - F♯m7 - B7 (ⅠMaj7 - Ⅵm7 - Ⅱm7 - Ⅴ7)
となりますが
C♯m7をF♯m7にドミナントモーションするセブンスコード、『C♯7』へとリハーモナイズすることができます。
こうする事でC♯m7上でも、C♯7へのリハモを想定してC♯ Altered Scaleを使うことができ、Hadrien Feraudのソロでも頻繁に出てきます。
今回は出てきませんがF♯m7もB7にドミナントモーションする『F♯7』にリハモすることができます。
こちらも実際に出てくるフレーズを見ていきましょう。
Hadrien Feraudが実際に使ってる箇所
■9:45~

■10:04~

■10:59~

・代理コード使ったフレージング
m7コード上でMaj7フレーズが使えるリハモアイデア
代理コードを使ったフレージングにも色々ありますが、今回はF♯m7(Ⅱm7)、C♯m7(Ⅵm7)の場合に使える
コードがF♯m7(Ⅱm7)、C♯m7(Ⅵm7)の時にそれぞれ短三度うえ(フレット3つうえ)のMaj7を弾く
といったアイデアを。
これも頻繁に出てきます。
詳しくは以前紹介した記事や動画も参考にしてみて下さい。
Maj7 Licks 解説
このアイデアを使うことで自然と以下のように代理コードとなります。
F♯m7『Ⅱm7(Sub Dominant)』→ AMaj7『ⅣMaj7(Sub Dominant)』
C♯m7『Ⅵm7(Tonic)』 → EMaj7『ⅠMaj7(Tonic)』
それぞれ対応したスケールも使うことができます。

こうする事でm7上でもMaj7のフレーズが使える上に、自動的にルートから弾き始めてしまう事も避けることができます。
このアイデアも頻繁に出てきますので紹介していきます。
Hadrien Feraudが実際に使ってる箇所
Gentle Thoughtsのソロでは
F♯m7『Ⅱm7(Sub Dominant)』の代理で AMaj7『ⅣMaj7(Sub Dominant)』=A Lydian Scale
を使うパターンがよく出てきます。
■11:01~

■11:08~(一瞬A Lydian♯5 Scaleが出ますがこちらも後ほど...)

サウンドも非常にカッコいいのがわかって頂けるかと思います。
Maj7フレーズがm7上でも使える汎用性の高さも魅力。
B7(Ⅴ7)上でAMaj7(ⅣMaj7)=A Lydian Scaleを使ったアイデア
このソロではB7(Ⅴ7)上でAMaj7を使ったフレーズがたくさん出てきます。
理屈的に考えると
B7(Ⅴ7) EMaj7(ⅠMaj7)
という進行を
F#m7(Ⅱm7) B7(Ⅴ7) EMaj7(ⅠMaj7)
とⅡm7-Ⅴ7-ⅠMaj7と細分化した上で、F#m7(Ⅱm7)上で代理コードのAMaj7(ⅣMaj7)を使ったフレーズと考えることができるかと思います。
ⅣMaj7に当たるのでスケール的にはA Lydian Scaleが使えます。
Hadrien Feraudが実際に使ってる箇所
■9:31~

■10:17

■11:21~

・Lydian♯5 Scaleに変化させたフレージング
先ほど説明してきた2つのアイデア、
・コードがF♯m7(Ⅱm7)、C♯m7(Ⅵm7)の時にそれぞれ短三度うえ(フレット3つうえ)のMaj7を弾く
・B7(Ⅴ7)上でAMaj7(ⅣMaj7)=A Lydian Scaleを使う
それらに加えて普通に
・EMaj7(ⅠMaj7)上でIonian Scaleを使う場合
これらの3つのアイデアですが共通してMaj7系のフレーズを使うことになります。
基本的にはIonian ScaleやLydian caleを使ってきましたが、Hadrien Feraudは度々Lydians♯5 Scaleに変化させてフレージングしています。
これがまたとんでもなくカッコいいのです。

Hadrien Feraudが実際に使ってる箇所
■9:42~

■9:46~

■10:08~

■10:17~

■10:57~

■11:19~

かなり多くの箇所で使用されているのが分かります。
多くは通常のIonian ScaleやLydian Scaleと組み合わせるように使われているのが分かりますねー!
これらのアイデアを使って自分でソロを作ってみる
それがこちら。
譜面と使ったスケールを書き込んでます。
このように覚えたアイデアを書きソロなりでアウトプットしていく事はかなり重要なんじゃないかなと考えています。
実際ここまでやると自分のフレーズとして、少しづつ落とし込めてくる感覚があり、逆にいうとトランスクライブしても、ただ弾いて終わり!だとフィジカルの練習にはなってもその先が見込めないです。
そういう意味で書きソロ作りは練習としてかなり有効だと感じます。
もちろん本番で書きソロを弾く必要はなく、ですがこうやってアウトプットを重ねて覚えたアイデアはアドリブとして少しづつ出力されてきます。
終わりに
めっちゃくちゃ長くなりましたが以上で終わりとなります。ありがとうございました。
あくまで僕がトランスクライブしてきたものを、僕の目線から落とし込んだものになりますので、考え方や捉え方が人によっては変わってくるかと思います。
また僕のコピー精度が甘く間違えているものも含まれてくるかとは思います(コピー精度も最初のものと比べると、これはこれで上がってきましたが...)
多分ここまで読み進めてきた人は相当愛がある人かと思うので、ぜひご自身でもトランスクライブしてみて下さい!
そして「ここは違くね?」みたいなの、ぜひお話ししましょ!
以上最後までありがとうございました!!
■Hadrien FeraudのAltered Scaleリック集なんてのも昔作りました。
こちらもよければ!
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レッスンページ
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このページやYouTubeでも一応見れるので、データ、ペライチで欲しい人向け。
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(とんでもない時間掛かったのでお気持ちいただけると泣いて喜びます。。。)
【PDF】
・Hadrien Feraudのアプローチを使った書きソロ
・Hadrien Feraud解説 スケール表
※Hadrien Feraudのソロの譜面は含みませんのでご注意ください。
YouTubeに譜面付きの動画を上げてますので、そちらをチェックして下さい。
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